魔法使いの使命-賢者 ソル・マギカとの遭遇ー

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このSSの続き。この先の重要人物との初めての出会いの話。

彗子「うーん、多分このあたりのハズなんだけどねぇ」


美枝子の体を元に戻すために、戻す方法が書かれている本を探す彗子。自分の娘が魔力の暴走で体型も皮膚の表面も変質してしまったため必死に元に戻るための方法を探していたが部屋に置いてある本はどれも分厚い上に数も無数で彗子は悪戦苦闘していた。


彗子「美枝子、体の方は今のところ大丈夫?」


美枝子「う、うん大丈夫。少し締め付けられてるような感じはするけど・・・」


体を覆ったピンクのラバー素材は薄っすらではあったが動き、美枝子の体を僅かにしめ続けていた。胸元のブローチからはそれまで感じていた意思や魔力が無くなっていたが体を覆うラバー素材からはかすかな魔力がにじみ出ており美枝子は不安で不快な表情をして床に座り込んでいた。


彗子「あ、魔力の解除の方法が書かれているけど・・・ダメよ!こんなのは生身の人間相手の方法じゃない!!」


魔力の解除の方法がようやく書かれた本を見つけた彗子ではあったが、その方法は美枝子の命を危ぶむかもしれないレベルの黒魔術であり、そんな真似は自分の娘を守ると決意してきた彗子にとって最も認めるわけにはいかないものであった。

部屋の奥にも古びた本がびっしりと置いてある本棚があったが、まるで掃除や手入れもしていなかったためか埃だらけになっておりその埃を払いながらも本を探す彗子。

彗子「ここから先は私が見たことも読んだこともない本ばかりね。何とか解除の方法が載ってる本があればいいけど・・・」


そのころ、床に座って待っていた美枝子は


美枝子「・・・私、どうなっちゃうんだろう?あれ、誰か来た」



ふと振り向くと、階段を降りてくる小さな人影が見えた美枝子。
その小さな人影は小声でも強気な感じの声でこちらに話しかけてきた。

???「何だい騒々しいねぇ。一体こんな時間に誰だい?」

彗子「あ、ハルエさん?すみません、こんな時間にやってきちゃいまして・・・」

美枝子「(えっ?ママはこの人の事を知ってるの?)」


心の中で美枝子は、今やってきたこの見知らぬ白髪でメガネをかけた老婆が誰なのか。そして、何故自分の母親がこの老婆の事を知っているのかと思った。


ハルエ「この子がアンタの娘さんかい?話には聞いた通りだったけど、まさか本当にステラマギカの再来とはねぇ。ところでアンタの名前は・・・彗子さんからだいぶ前に聞かされていたと思ったんだけど、たしか美枝子さんだっけ?」


美枝子「あ、はい。美枝子・・・星城 美枝子っていいます・・・(な、なんで!!?この人はどうしてステラマギカの事を知ってるの!?それだけじゃない。この人は・・・私がステラマギカに変身してる事を知ってる!!)」


彗子「あーちょっと!まだこの子が変身してることは私と美枝子の友達以外はまだ誰も知らないことになってるから・・・ゴメン!ビックリさせちゃったわね。紹介するわ。この人は、日向(ひなた)ハルエさん。私が今の美枝子ぐらいの歳の時の魔法の師匠になってくれた人なの」


美枝子「魔法の師匠?」


ハルエ「おいおい。師匠なんて御大層なもんじゃないよ。私はただ、人を助けたいっていうアンタの想いに答えただけさ。それよりも・・・まずこの子の今の状態について説明してもらえるかい?」


ハルエさんの見た目と声と性格は、サマーウォーズの陣内 栄(じんのうち さかえ)さんみたいな感じをイメージしていただきたいです。↓

https://www.youtube.com/watch?v=Q1r8o8et15Q

彗子「いえいえこちらこそ部屋に勝手に上がってしまって本当にすみません。実を言いますと・・・」


彗子は、美枝子がどうしてこのような状態になったのかという経緯をハルエに話した。


ハルエ「ふむふむ・・・そりゃあ魔力の扱い方をまだこの子がよく知らなかったろうからねぇ・・・どれどれ・・・」



するとハルエは静かに、魔力がなくなった美枝子の胸元のブローチに手をかざす。
ハルエは美枝子の聞いたことのない独唱をはじめた。

美枝子「この呪文は一体・・・ウッ!?」

すると、全身を覆っていたピンクのラバー素材がじょじょに溶けてスライム状になりピンクのスライムは元々着ていた学校の夏服へとその姿を変貌させていく。
美枝子の皮膚に癒着していたラバー素材は無理やり引きはがすような感じで皮膚から離れるため美枝子の全身には、ほんの少し魔力による熱と痛みが生じていた。

彗子「美枝子!大丈夫!?」

美枝子「か、体中がほてってる感じがする・・・ッ」

ハルエ「少し我慢しなよ。もうちょっとで終わるからね」

しばらくして、ハルエは美枝子の胸元から手をかざし終ると美枝子を覆っていたピンクのスライムは完全に学校の夏服に戻り、体自体はステラマギカの体型のままで髪も黒髪ロングになっているが美枝子の全身を覆っていたラバー素材のスーツは跡形もなく消えていた。

ハルエ「よし、皮膚の表面に溢れた余分な魔力はこれで落ちたはず。気分の方はどうだい?」


美枝子「ま、前よりも気分が軽くなった感じがします」


ハルエ「ほうそれならよかった。一安心といったところだけど、まだアンタには元に体に戻ってもらわないといけないのは解ってるね?」


美枝子「は、はい・・・」


ハルエ「その前にまずアンタがどうしてこんな事になったのかを放しておいた方がいいね。アンタがこんな事になった原因は、たぶん大した事もない用事で頻繁に魔力を使ってた事だろう」


美枝子「そ、それって・・・私が学校で見えない所で魔法を使って学校の人達を助けていた事なんでしょうか?」

ハルエ「そういう事になるねぇ。しかも、魔力の正しい抑え方を知らないで本来の魔力を抑えながら変身をしていなかったかい?」


美枝子「(トイレで半分変身していた時の事だ・・・!)は、はい・・・」


ハルエ「あ~やっぱりそういう事だったかい。そんな事をしていたら体内の魔力のバランスがおかしくなっちまって、蓄積した魔力で取り返しのつかない事になってたよ」


美枝子「と、取り返しがつかないって・・・」


ハルエ「現にその胸につけた宝石は魔力を失ってるじゃないか。いいかい?そのままの状態で魔力を使い続けていたら、アンタの体どころかこの町一帯がどうにかなっちまってたろう。そうなる寸前にその宝石の意思が魔力と一緒にアンタの体から飛び出してアンタやこの町を守ったってことさ」


美枝子「そ、そんな!?」


自分の秘められた魔力を見透かされた上に、自分がこの町を脅かしてしまうかもしれなかった事を知った美枝子の表情は青ざめた。


ハルエ「ところで彗子さん。アンタはステラマギカの転生の事をこの子に話したのかい?」


彗子「うーん・・・何代も魂と魔力が転生しているという話と、その転生した魂と魔力がこの子に宿っているという話まではこの子にはしてあげたんですけど、それ以上の話はねぇ・・・」


ハルエ「ふむふむ。まあこれ以上の話は、この子にはまだ難しいだろうからねぇ」


ハルエは、改めて美枝子に話しかける。


ハルエ「美枝子さん。私はこの町に来てから長いけど、この町に来る前はこの日本に住んでいたわけじゃないんだ」


美枝子「あ、そうなんですか。というと、どこか外国に住んでいたとか・・・?」


ハルエ「いや一番最初のステラマギカが生まれた場所さ。美枝子さんに分かりやすく言えば、私は本来この世界とは別の世界の住人なんだよ」


美枝子「最初のステラマギカ・・・!?」


ハルエ「その別の世界での私の名前は、日向ハルエじゃないんだ」


彗子「ちょ、ちょっと待ってハルエさん!!その事は地上の世界の人に口外できないって最初私に魔法を教えたときに言ってたはずじゃ!?」


ハルエ「いいんだ。ステラマギカの転生が起きた以上、この子にはその事を伝えておかないといけないのはアンタなら解るはずだろう?」


彗子「ええ、そうですよねぇ・・・」


突然の出来事に動揺する彗子をみて、ただ事ではないと美枝子は悟った。


ハルエ「いいかい?私のもう一つの名前はね・・・ソル・マギカというんだ」


美枝子「ソル・マギカ・・・?」


ハルエ「そう。ソル・マギカというのは代々ステラマギカの側近。つまり私達のいた世界の長老のステラマギカを支えるのが私の一族の使命なんだ。そしてステラマギカの魂と魔力が美枝子さんに転生する前に長老として活躍していた頃のステラマギカの一番そばの側近のソル・マギカだったのが、この私だったんだよ」


美枝子「そ、それって私の前にステラマギカに変身していた人の傍にいた・・・って事ですか?」

ハルエ「そういう事になる。せっかくだ、その時の話でもしようかねぇ・・・」



自分の前にもステラマギカになっていた人物を知っているという人間が目の前に現れ、唖然とする美枝子。自分よりも前にステラマギカとなった人物は一体どのような人間でどのような事をやってきたのか?
そしてこのハルエという老婆との出会いが、美枝子はもちろん優二の人生をも大きく左右する事をこの時の美枝子と優二はまだ知る由もなかったのである。

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